
2年前から天描画と表現させていただいていますが、いわゆる点描画と出会ったのは、高校卒業後、語学留学で滞在したハワイでした。語学留学という名目だったんですが、サッカーに目覚めてしまい、ハワイのリーグでプロとしてやっていこうとした時に腰を傷めてしまったんです。そんな時、サッカーチームの1人から、スプレーアートをやってみないかと誘われ、軽い気持ちでやってみました。その時のルールが、色を使わず黒白を使うということでした。通常は、太い線から細い線でグラデーションを描くのですが、なぜか点でやってみたんですね。当時、好きだったラッパーのCDジャケットを下書きにしてみたんですが、これがなかなか面白かったんです。「俺って天才かも」と真剣に思っていました(笑)。描いた絵をハワイの叔母に見せたところ、「絵の道に進んだら?」と言われ、沖縄にいる父に強く進言してくれたんです。小中学校の図工・美術の成績は2。考えられない展開でした。帰沖し、県立芸大に入学。学内にいないことで有名で、当時は就職氷河期だったので、在学中に道筋をつけておこうと作品集を持って、国際通り近辺のショップに飛び込みで入るという無謀な(笑)行動に出ていました。その結果、東京を拠点とするブランドの目に止まり、Tシャツのデザインをすることになったり、壷屋やちむん通りの道路のデザイン、ポスター・パッケージなどのグラフィックなど、あれよあれよという間に仕事が広がっていったんです。その時は、商業デザインとアートを両輪にやっていこうと考えていました。しかし、若いうちは脇が甘いこともあり、数々の失敗も経験しました。そんな時間を経て、現在、籍を置いているトータルプロから声がかかり、マネジメントを任せて、これを機に天から授かるアートということで、天描画という表現を選択し、一筋で行こうと決めました。それが2年前のことです。

僕が一貫して描いているシリーズタイトルは、「古代琉球の神々」と言いますが、これは、幼い頃、祖母から聞いた話を描いています。祖母は糸満武富の神女で、行動を共にする毎日の中で、色々な話をしてくれました。例えば、土帝君(トーティークン)、これは祖母によると、「土帝君は、食べ物の神様で動植物の種を持っていて、身体に龍が巻いている。畑、土地を耕すと土帝君(トーティークン)が龍によって種を蒔き、いい芽悪い芽を出させて取捨し、心の種である福、徳を世に広めた」そうです。このような話をずっと聞かされていたんですが、子どもの頃は、よくわかっていませんでした。ただ、祖母と一緒に行動して話しを聞く毎日が続きました。それが、点描という技法に出会い、アートを生業にしようと考え始めた時から、祖母の話しが一気にフラッシュバックしてきたんです。今、僕は祖母が僕に伝えたかったことをアートとして表現し、世に問うという立場にあります。沖縄の先人が連綿と伝えてきた教えを僕だけでなく、多くの今を生きる人々に知っていただけたらと思います。アート=芸術の芸の字は「くさかんむりに伝える」と書きます。草は自然つまり地球自身を表しており、アートは自然、地球の存在、素晴らしさを世に伝えるものだと考えています。昔は、沖縄のどこの家庭でも家族が沖縄の教えを伝えていたと思いますが、今はなかなかそうもいきません。なおかつ、世が荒み人々は癒しを求めているという状況にあります。僕のアート、と言っても厳密に言えば祖母が伝えたものですが、これが少しでもお役に立てたらと思っています。
点描画から天描画へと表現が変わったのも祖母の教えが僕の根っこにあったからだと思いますし、今は天に在る祖母の存在が、僕を動かしているのだと思います。
 よく聞かれますが、実は一番リラックスしている時間なんです。描く時は呼吸を止め、ペンを放すと呼吸をする…。この繰り返しです。朝6時から10時まで庭の樹木を眺めながら、小鳥のさえずりを聞いて、好きなアートを描く、マイナス要素は全くありません。
 現在、子ども達にアートを通して自然の素晴らしさ、沖縄の素晴らしさを知ってもらおうと、有志を集めて「インテリセンス」というユニットを組んでいますが、これは知性と感性の双方を磨いてもらおうというものです。今の子ども達は、知識だけが先走ってしまい、感性がアンバランスになっています。感性を生業としている大人と子ども達の感性をぶつかりあわせると、面白いことができるのではないかという発想からスタートしました。結果、大人も子どもの頃を思い出せるのではないかと…。現在は、大里中央児童館と浦添児童館で行っています。僕の使命は、祖母の教え、つまり先人の教えをカタチにし、大人はもとより子ども達世代へ伝えることにあると考えているので、今後もさまざまな方法を模索していきたいと思います。
ただいま、新作を中心とした「POINT GRAPHY EXHIBITION」と銘打った展示会を開催中です。今後も沖縄からインスピレーションをもらい、祖母の言葉を思い出しながら、アート一筋でやっていければと考えています。そして、80歳位になったら掛軸の絵師をやってみたいですね。現在、線を表現する水墨画も勉強しており、点で表現する天描画と対極にある世界の融合を考えているところです。今は、次々と湧き出るアイディアと共に、好きなことができる毎日に感謝の一言に尽きます。
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