紙自身の魅力は、沖縄の風土に育まれた素材を活かした自然の風合いでしょう。作る魅力としていえることは、紙作りそのものが自然とともにあるということです。例えば、天日干しをする日は、日の出と同時に天日干し作業がスタートできるように逆算し、日の入りには作業を終えるように工程を組みます。また、梅雨時は、油断するとせっかく準備してきた途中工程で腐ってしまうことがありますが、これも生きているという証し。すべては自然にさからわず合わせていくことが大切なんだと、20年を超えた今、深く思っています。
首里儀保の現在、蕉紙菴がある場所は、琉球王国時代、公に使う上質の紙であった「百田紙」を製作した王府の紙漉き所跡となっています。近くには、紙漉御殿があったという歴史ある地で、私の前に勝先生が工房を構えた場所です。紙の製作には、きれいで豊富な水が必要なんですね。首里には、多くの水場が存在し、琉球王国時代から、紙漉きが盛んな場所でした。大正から昭和初期頃には、55もの紙屋があったそうです。蕉紙菴の近くには、宝口樋川(たからぐちひーじゃー)、儀保川(じーぶがー)などがありますが、粘土質のクチャと呼ばれる土を通って流れ出る水は、アルカリ性で、紙漉きに適しています。 工房のすぐ近くは交通量の多い場所ですが、一歩奥に入った工房周辺は多種多様な植物が自生している自然豊かな場所となっています。毎日眺めている植物を紙製作に活かせないかと考え、沖縄の植物によって染めた蕉紙菴オリジナル紙製作を行っています。ヨモギ、ヤマグワ、クロトン、ゲッキツ、リュウキュウコクタン、ゲットウ、ソウシジュ、ヒカンザクラ、フクギなど、現在のところ23種類を数えます。これも試行錯誤の連続です。例えばヒカンザクラですが、乾燥した素材がたまたまあったので染めてみたところ成功。次に生の木を使ってみたら見事に(笑)染まらなかったんですね。教科書やマニュアルがあるわけではないので、すべてが自分の工夫次第。大変ですが成功した時は、やはりうれしいですし、ひとつひとつの経験が次へのステップになっていくわけですね。
勝先生に師事して4年、その後工房を構えて活動して参りましたが、今後は、他ジャンルのアーチストの皆さんと交流をはかり、新たな創作の世界を広げていければと考えています。また、琉球紙を確立した先人と復興に尽力された安部先生、勝先生に報いるためにも、伝承していかなければなりません。勝先生の意志を受け継ぎ、本島小中学校や県立芸大、各講座などで紙漉きの指導を行っていますが、今ますますその活動を盛んに行っていきたいと考えています。
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◎取材を終えて… |
●パーソナルデータ●
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出身地/那覇市松川
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●オーガニゼーションデータ●
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| 1983/勝公彦に弟子入り
1988/手漉琉球紙工房蕉紙菴開設 |
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