ぱっしょんリーダーに聞け! 


  



  


 曾祖母の代までさかのぼりますので、私達で4代になりますが、すべて長女が継いでいます。名称の由来は航海の神様が祀ってあった天妃宮近くに(現在の天妃小学校近く)あったからだと言われています。天妃宮があった久米は、その昔、久米村(クニンダ)と言われた地域で、中国から渡来した人々が住む地域だったそうで、航海を願う人々が、中華菓子をお供えしたことが、天妃前饅頭の起原だったのではと言われているようです。  祖母の代に、去る大戦の戦災で焼けたので、現在の泉崎の地に移り住んだそうです。戦後、祖母は雑貨店を営み、その片隅で饅頭を販売していました。そのうち、大型スーパーがオープンするなどしたため、雑貨店を閉じ、饅頭一本で営業するようになっていきました。  祖母は、祖母の長女、つまり私の母と婿である父と共に、せっせと饅頭を作っていました。ですから、私と妹、弟の3人は、饅頭を包む月桃の香りの中で育ったのです。中学生位からは、私も店番や掃除など自然に手伝うようになり、高校生位からは、実際に作っていくようになりました。祖母、両親、私、妹、弟の6人で賑やかに饅頭を作っていました。



 11年前に母がこの世を去りまして、私が継ぐことになったのですが、そのショックですぐには継ぐことはできませんでした。饅頭を見ると母を思い出して辛かったんですね。約1年ほど、全くちがう職場でアルバイトをしていました。そんな時期、妹の励ましや古くからのお客様の優しい言葉によって、もう一度頑張ってみようと思うようになったのです。  現在は、私、妹、弟の3人で切り盛りしています。妹は成型、弟は餡作り、そして私は成型と餡、全体のチェックをするという仕組みができています。これは、高校生位から手伝うようになった私達に自然に母がその役目を与えてくれました。気がつけば、3人でひとつの饅頭が作れるようになっていたんですね。将来を考えて意図的だったのかもしれませんね。



 天妃前饅頭は、その昔、天妃前でいくつかの店舗が軒をつらねていたようですが、祖母の話しでは、「うちの饅頭はさめてもかたくならない」ということでした。現在でも、実際お客様にそのようなお話を伺います。

 皮の小麦粉の配合などに特徴があると思いますが、申し訳ありませんがくわしくは教えられません(笑)。餡は、三温糖とはったい粉を練り上げて作ります。これがなかなかの力仕事で、担当の弟は大変だと思いますが、頑張ってもらっています(笑)。  饅頭はとてもデリケートな食べ物で、気温、湿度、季節によって皮の水の量、餡の火の調整など、とても微妙なんですね。これは、マニュアルがあるわけではありませんので、カンに頼るしかありません。大人になってから覚えようと思っても覚えられるものではありません。教えるでもなく、自然に覚えさせてくれた母に感謝ですね。

 お客様から「おばあさんやお母さんの時と同じく、変わらずおいしいね」とか「伝統のお菓子を途絶えさせないように、続けて頑張ってね」などという励ましの言葉をいただいた時はうれしくなります。逆に、饅頭イコールおばあさんが作るものというイメージがあるようで、「こんな若い人が作っているの?大丈夫?」と言われることもあります。でも、召し上がっていただいて「おいしいね」と納得していただいており、心の中でガッツポーズというところでしょうか(笑)。  少し前までは、饅頭は年輩者のおやつというイメージがあったようですが、最近は若い方もわざわざお見えになってくださいますし、浦添、宜野湾方面からいらっしゃるリピーターの方もいらっしゃいます。また、沖縄ブームということで、観光客の方が、地図を片手に来店されることも多くなりました。中には、県外からの修学旅行生もいらっしゃいます。ありがたいことですね。  妹がブログを開いているのですが、甘味好きの方が、ブログにたどりついていらっしゃるという例もあります。  このように、古くからのお得意様から、若い方を中心とした新たなお客様まで、ご愛顧いただけて、この仕事をしていてよかったと実感しています。

 日常に追われて、なかなか自分自身の立場や仕事についてじっくり考えるようなことはありませんが、今、質問をお受けして思うことは、さかのぼること3代、曾祖母から始まった仕事ですが、私はその4代目で、その年月を土台にあるのだなと実感しています。お客様の「続けてね」、「頑張ってね」という声の重みを今、ひしひしと感じています。  母からよく聞かされていた曾祖母の言葉に「忙しいときほど頭を下げて働きなさい、暇な時はあせらずゆっくりと」というのがあります。この言葉は、長く続けていく上で心にとめていきたいと思います。  おばあちゃんといっしょに来店する小さなお子さんをみていると、ありがたいなあと思いますし、頑張っていかなければと気が引き締まります。

 母とのおしゃべりが楽しくて通っていたお客様も多くいらっしゃいます。私には、それほどの話術もありませんが、ホッとできる懐かしい味を守り続けていくことが、夢であり目標です。  妹には、長男、長女がいますが、長女が饅頭が大好きで、作っているそばから「食べていい?」と聞いてきます。これはかわいいですね。また、長男は卒園式で将来の夢を「饅頭屋を継ぐこと」と言ってくれました。かわいいやら、うれしいやら。まあ、大きくなったらどうなるか分かりませんが、期待して待っています(笑)。

 
  
 
  








  

◎取材を終えて…
 「饅頭、食べていい?」饅頭大好きな幼い姪御さんの声に微笑む上原さん。家族の絆が伝統の味を守っているのだなと実感しました。

 
●パーソナルデータ●
  

出身地/那覇市
趣味/海外ドラマ鑑賞

  
  
●オーガニゼーションデータ●
  戦前/天妃小学校近くにて営業
1946/泉崎に移転
   
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